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2017-01-11

老いの悲しみの話。あるいは、笑い話ですが。

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自分の中にある自分が知らなかった感情に出会うと、びっくりします。

いくつのときも、自分を知る驚きは新鮮で、時にちょっぴり痛いものだったりもしますが、決して悪い感じではありませんね。

 

そのとき事件は起こった

正月に70代の老父母と妹夫婦と5人でおせちを囲んでいたときのこと。

わいわいと皆で食べ飲みしつつ話をしていて、気がついたら、父が、5人で取り分けるように鉢に盛っていた「栗かのこ」を、ひとりで半分以上食べてしまっていました!

「ちょっと、お父さん、なんてことをっ!」と、あっけにとられました。だって、それ、皆で楽しみに食べようと思っていたとっておきなのに。

「お父さん、それ、お父さんだけのじゃないよ!」といっても、意味が通じていないようで、まだ食べていて離しません。

そのとき、自分の中に、思いがけない悲しみがこみあげてきました。
いい感じに酒が回ってたんだと思います。

年を取るって悲しい。老いるって悲しい。

その悲しみは、びっくるするぐらい鮮やかで純粋なものでした。

純粋な悲しみ

父が手術できない心臓病と認知症という診断を受けてから2年。知らされた最初は衝撃を感じ、混乱し、「なんでこんなことに」と怒りを感じ、「この先の生活はどうなるのか」と不安でいっぱいになりましたが、やがて現実を受け入れ、平静をキープし、いろんなことを前向きにとらえ、自分にできる最善のことをと考えて、せいいっぱい対応しています。

でも、こんなに悲しいと思ったことはなかった。
私の中の悲しみは、小学校3年生ぐらいの子どもの心のかたちをしていました。
同時に、そんな自分がいることにびっくりしている大人の自分もいました。

なんでおとうさん、だんだんよわっていくの?
できることをぜんぶしてもダメなの?
いやだ、いやだ。
でも、じかんはまきもどらない。
わたしもいつかはそうなるの?

60歳では年寄りなんていえないくらい皆長生きで健康な時代になったけれど、それでもやっぱり人は年をとって死んでいく。
どんなに明るくはつらつと前向きに日々を送っていても、老いからは逃れられない。
お釈迦さまは、人生の苦しみを生老病死といったけど、本当にそうだ。どんなに言葉を飾っても、老いは苦しくて悲しい。時間は巻き戻せない。

これもたぶん年のせい?

そんな深淵がぐうっと持ち上がってくる気がして、目に涙をためてこらえていたら、妹が「お姉ちゃん、栗かのこ、食べたかったんだね」って。ちがーーーう!!!

年々、酒に弱くなっている自覚あり。泣き上戸なんてまっぴら御免です!

でも、こんなふうに自分の純粋な感情を観察するような体験は、時にはあってもいいのかもしれないと思いました。知らなかった、こんな感情。

心を落ち着かせてから父に、「栗かのこ、そんなにおいしかった?」と聞いたら、「ああ」とにこにこしているから、あーそんならもういいかなって思いました。

……そんなにおいしかったのなら、やっぱりちゃんと食べたかったですけども!

 

見栄や思い込み、無意識に着込んでいる鎧まで取っ払って、自分を見つめてみたら、新たな発見があったり、時には泣きたくなったり思いがけない感情と向きあうことになるかもしれません。

自分史の文章は、いつも書いている文章とは少し違う、自分を掘り下げるような文章です。それでいて、人に読んでもらうための文章でもあります。

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【こちらもあわせてご覧ください】
話すことには勇気がいり、少しの開放感がともない、たぶん誰かの心に響く。(自己開示)
家族の認知症(アルツハイマー)は、受け入れるまでが最初のヤマ。

 


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このブログを書いている人
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宮野真有(みやの・まゆ)

東京都練馬区在住。フリーランスのフォトライター。

「楽しんで」「長く続けられる」「自分らしさが発揮できる」文章を大切に、教える・聞く・書くなどの文章関連のサービスを個人向けに行っています。

またブログでは、「植物」×「写真」×「文章」の3つをキーワードに、ベランダガーデニングや公園散歩の楽しみを発信しています。

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