冬に花咲け。(サザンカ)
サザンカ(山茶花)は、冬の花です。ツバキ科の常緑小高木。
私がこの花の名を知ったのは、童謡「たき火」(巽聖歌作詞・渡辺茂作曲)に歌われていたのが最初でした。
ツバキと似ていますが、花が終わると花首からぽたりと落ちるツバキと違って、サザンカは花びらがはらはらと散り落ちます。
ふと。
どうしてサザンカは冬に咲くのか? 気になりました。
なぜ、大気も大地も冷たくなっていくこの季節を花が咲く季節と決めて、こぼれんばかりの花をつけるのでしょうか?
真冬には、チョウやハチなどの虫も姿を消してしまいます。生存戦略にそんなに優位とも思えません。
植物の気持ちになってみたとして。
春に花が咲くのはわかります。あたたかくなって芽吹き成長する勢いに乗って、噴き出すように花を咲かせるのでしょう。
夏は暑くてややしんどい季節ですが、エネルギーに満ちた季節です。成長しきったところで、ゆっくりしっかり花を咲かせるのもいいでしょう。
秋は、冬に向かって眠りの準備を進める季節ですが、夏にためこんだエネルギーを初秋に花の形にすれば、寒くなる前に種をつけるところまで済ませられそうです。
では、冬は? 冬のメリットは?
以下は私の想像です。
暑い寒いは哺乳類である人間の感覚ですから、植物も耐寒性のあるものならば耐えるでしょう。そこはヒトの感覚で考えない、として。
すごく大まかにですが、夏の花と冬の花は、咲いている期間が長いな、と思いました。
ぱっと思いつくもので、サルスベリ、キョウチクトウ、キバナコスモス。6月から9月ぐらいまで、数ヶ月単位で咲き続けます。
そしてサザンカ。こちらは11月から2月ぐらいまで、やはり3〜4ヵ月はゆうに咲き続けます。
対して、春の花と秋の花は華やかで目立ちますが、短期間で咲き終わるものが目立ちます。
春はウメ、モモ、サクラ、コブシ、レンギョウなど。つぎつぎに咲いては終わっていきます。
秋はヒガンバナ、秋の七草、キンモクセイ。いずれも咲いている期間が短めです。
春と秋の花ももちろん、比較的長く咲く花もありますので、ここはあくまでざっくりとしたイメージの話でお願いします。
科学的考察というより、連想ゲームです。
そこから思ったこと。
冬に植物にとってメリットがあるとすれば、夏と同様、気候の変化が少ないこと……?
植物にとって、春は成長していく、秋は眠りにつく準備をする「変化のとき」です。自分自身が変わりながら花を咲かせる場合、同じ花を長期間咲かせることは難しいでしょう。そして花咲く期間が短いからこそ、花は見る人の目に鮮烈に印象づけられます。
一方、夏は気温が上がりきって下がるまで、冬は下がりきって上がるまで、暑い寒いという若干の負荷はありますが、気候は比較的変化が少なく、安定しているともいえます。体力のある花樹などにとっては、落ち着いて長く花を咲かすことができる期間なのかもしれません。
このたとえが正しいかどうかわからないのですが。
人間の衣替えのことを考えると、春や秋ってやっぱりあわただしくないですか? 夏や冬って、ある程度暑くなったり寒くなったりすると、もう替えなくてよくなるので、しばらく落ち着きますよね? そして人間自身も、季節の変わり目に体調を崩しやすくなったりしませんか?
……すみません。かえってわかりにくくなりました!
なんとなく。
花の咲く植物も、季節や周りの変化に乗っかりながら、わーっと咲くのが好きなタイプと、落ち着いたときに腰を据えて、じっくりと花を咲かせたいタイプがいるのかなと思うと、違いとして納得できます。
でもじゃあ、なぜエネルギーに満ちた夏ではなく、多くの生命が眠りにつく冬をわざわざ選んで咲くのか?
それはたぶん……人間にも朝方と夜型がいるように、きっと植物も暑さに強いタイプと寒さに強いタイプがいるんじゃないかと考えてみました。
みんなが「夏咲こうよ、夏ラクだよ〜」と言っても、「冬もいいよ。寒いほうが性に合ってるし。静かなほうが集中できるし」と、サザンカは思った……のかもしれません。
こんな妄想を裏付けてくれる科学的な説、どこかにないでしょうか?
ありそうな気がします。
ナンバーワンじゃないオンリーワン。みんな違ってみんないい。
少しずつ冬に近づいていく晩秋の道で、サザンカの気持ちになってみました。