夏休みの宿題が片付かない!:ノスタルジック・メランコリア その1
自分史とかプロフィールとか自分の棚卸とかいいますが、過去の自分を振り返ると、じんわり苦〜い気持ちになること、ありますよね。そういうのに限って、今のコンプレックスになっていたりもします。
そのユウウツを蹴っ飛ばせ!
自分の苦手意識をネタに、専門家に話を聞いちゃう対談シリーズ、始めてみます。今回は「夏休みの宿題」について、現役の小学校の先生でもある知人に、ざっくばらんに話を聞きました。あなたの過去の解釈も変わるかも? 全3回でお送りします。
岩田あや先生(仮名) プロフィール
神奈川県横浜市教職員。教師生活14年のベテラン。2016年は、前年から持ち上がりで4年生39人を担任。小学校の先生の常として、国語・算数・理科・社会、そのほかよろずの授業を担当しています。怒るとこわーい、でも明るく熱心な頼れる先生として、子どもたちに親しまれています。
やりたくないことは後回しにしちゃうものだけど……
宮野 その昔、私、夏休みの宿題をギリギリまでためる子でした。いつでもイヤなことは後回しにして、親に「やったの? やりなさい!」「またなの? ダメねえ」と言われて、最後は半泣きで。こうして話していても、なんだか切なくなってくるぐらいで!
岩田 ふふふ。実は私もそうだったんですよ。
宮野 あの頃もっと頑張っていれば、もっと立派な大人になっていたのかなあって思います。今の岩田先生のクラスにも、宿題をためちゃう子っていますか?
岩田 いますねえ。普段ギリギリな子は、夏休みの宿題もギリギリなことが多いです。
宮野 う、他人事とは思えない。一体どうすればよかったんですかね?
岩田 これは私の考えなんだけど、小学生でも、「時間のやりくり」ができるようになるかならないかは、とても大事なこと。だから、私は普段から宿題を多く出してます。
宮野 うわー!
岩田 自宅で集中して40〜50分かかるはかかるドリルと漢字練習を、昨年から、毎日宿題に。
宮野 小学校中学年で?
岩田 始めたきっかけは、みんな「うちで勉強する」という習慣がついていなかったこと。基礎学力が身についていない子も多くて、勉強して「わかるのがおもしろい」「できるようになると楽しい」と思えるところまでいっていなかったのね。
どうしたらそれができるようになるかと考えた結果、「学校で学んだ考え方を、うちで定着させる習慣をつけてほしい」という答えにいきついたわけです。
宮野 歯みがきみたいに、毎日行う習慣にしちゃうということ?
岩田 そう。優先することのために時間をやりくりして、時間のマネジメント能力を高めるのって、もともと夏休みだけでは身につかないこと。とうてい無理。だから普段から習慣づけようとしたのね。
宮野 いきなり、「自分で計画立てて宿題を片付けましょう」といっても、今までできなかった子どもに急には無理ってことか。……それはそうだよね!
毎日の習慣の積み重ねは、必ず自分を高める
岩田 というわけで私のクラスは、夏休みの宿題も、普段と同じだけの量のドリルと漢字練習×日数分を出してます。
宮野 なかなかヘビー。
岩田 でも、夏休みが始まる1〜2週間前には、この宿題の量と内容を知らせて、「今からやり始めてもいい」と伝えました。「先にやっちゃいなさい。今から始めて、どんなペースで進めたら、いつ終わるのかを自分で計算して、計画を立てなさい」と。
宮野 小学生相手に、とても高度なことを要求されている気が……!
岩田 日常にしても夏休みにしても、「どうして宿題が必要か」「どんなねらいで宿題を出しているのか」ということまで話をする先生や、理解している保護者は、たぶんあまりいないと思うのね。
宮野 確かに、子どものころに、そこまでは考えたことなかったなあ。
岩田 子どもは素直な感情で、「やりたくないことはやらない」「後回しにしたいことは後回しにしよう」とするもの。それが、「これはやらなきゃいけないことだから、先にしよう」というように、見通しを持つ力がついてくると、段取りがよくなったりするんです。
(1) 時間のやりくりを考えることができるようになる
(2) 学習の習慣がつく
(3) いろんなことが変わる!
こんなふうに、宿題のとらえ方次第で子どもたちがすごく変わっていくのを肌で感じているから、「宿題は大事だな」と思ってます。
宮野 じゃあ岩田先生は、子どもたちが宿題とどんなふうに向き合ったら理想的だと思ってる?
岩田 最終的には、日常のルーティーン(毎日必ずやること)の中に「学習」が入ることを目指しているの。
毎日習慣になっている小さながんばりが、大きな成果につながっていく。そして、その積み重ねは、必ず自分を高める。そういうことを身をもって知ってほしい、というのが一番のねらいなんです。
(つづく)
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