何事も、すぐれた先達の助言が一番ありがたいのは始める前だったりする。
プロや指導者、経験者のアドバイスが、特に必要なタイミングってあると思います。
中でも貴重なのが、「始める前」の相談や助言。そのありがたみや難しさをかみしめたいものです。
ちょっとオーバースペックなのは承知の上で、買っちゃいました。トレッキングシューズ。
近いうちに陣馬山に行く予定なのですが、よい買い物であったことを願うばかりです。
山歩きのずぶの素人です。
少しのことにも、先達(せんだつ)はあらまほしき事なり。
(『徒然草』第52段)
「ちょっとしたことでも、よく知っている人に聞いてからやったほうがいいもんだ」という、『徒然草』の作者、兼好法師のつぶやき。
「先達」とは、先に立って後輩を導く先輩、ガイド、指導者のことです。
まずそこからわからないワケですが
初心者向けの日帰り登山ツアーに参加する気になったのですが、案内のチラシを見たら、初心者には地味にハードルが高かった。
持ち物
《服装》
- 山登りに適した服装と帽子
- ザック
- トレッキングシューズ
いや……ちょっと待ってちょっと待って!
こちとら、まずその服装の指示から説明が欲しいんですが!
その3行の中に、質問したいことが最低でも4つはあるんですが!
スタートラインにつくための選択
何かを始めるためには最初に準備が必要ですが、次の場合、まずここで困難が生じます。
その1。最初の選択が、そのあと当分つきあうことになるものを選ぶ場合。
その2。それが結構高額な場合。
「まずやってみる」ために揃える環境や道具が、それなりに高額なことってありますね。学校や流派は、一度選んだら、途中でぱっぱと変えるわけにはいきません。一眼レフカメラでCanonとNiconどちらを選ぶか、なんていうのも、そのあとのレンズ選びに関わってきますし。
山用のトレッキングシューズも、ちょっと丈夫なスニーカーみたいなものかなと思ったら、お値段結構しました。真面目に選ぶと、1万5千円から、といったところでしょうか。素人にしてみれば、「そもそもそれ、おためし体験に本当に必要ですか?」というところから気になる。
その道に詳しい店員さんの助言を受けたいものですが、そうなると今度は「どこの店で買えばいいの?」という疑問が生まれてくる。
こんなとき、できればそれを選ぶ前にこそ、〝先達〟のアドバイスを受けたい。
それも、ただそれが好き、詳しいというだけでなく、広い視野を持ち、初心者の事情もわかってくれて、身近な地元の情報も持っていて、自分のためによりベターなアドバイスをくれる、すぐれた先達に。
初心者は楽をして正解にたどり着きたい
初心者にしてみれば、一番最初に〝ちょっとだけ〟さわりの部分を教えてくれたらいい。そんなお気楽な気持ちがあるのは否めません。
詳しく教えてもらうのは、ちゃんと始めてからでいい。そのときには、お金も時間もかけよう。でも今は、さくっとお手軽に、知りたいことだけ知りたい。
しかし、そのド素人の「さくっとお手軽に知りたいことだけ」に答えるのこそ、かなりの知識と視野の広さ、それに時間と手間が必要なのが盲点です。ベースのない素人に、言いたいことを理解させるだけでも大変なことです。
ずぶの素人に助言するのは、至難の技
立場を変えて考えれば、上級者にとってずぶの素人にアドバイスするのは、とても大変なことなのが想像できます。
会話のベースとなるべき共通の知識や認識がない状態で、相手は自分の疑問に対する答えだけが知りたくてうずうずしている。
上級者から見れば、「違うそれはそうじゃない」と言いたくなる勘違いも山ほどあって、それを正すだけで疲れてしまうかもしれません。
それに、まだ始める前の初心者は、ちょっとやってみて「やっぱりやーめた」という割合も高い。いろいろ親切に教えても、無になる可能性もかなり高いといえます。
でも、自分が得意で好きな分野に興味を持ってくれるのはありがたいし、もしかしたら仲間が増えるかもしれないのも嬉しい。だから好意的な上級者は、貴重な時間を削り、手間を割いて、丁寧に教えてくれるのです。それが当然だと思ったら、バチが当たります!
始める前に話を聞ける先達に恵まれたら、心からの感謝を!
だから、もしも「これから始めたい」初心者が、「親切で時間と手間を惜しまずアドバイスをくれる」上級者と出会えたら、それはとてもとても、本当にありがたいことなのだと、心の底から感謝をすべきです。
そして教える側も、1対1で素人の疑問に応えて説明することこそ、実は大変かつ高度なことなんだと自覚していいと思います。
謙遜せずに「こういうことなら教えられるよ」と自慢していいと思うし、お礼をしてもらえるのなら堂々と受け取ればいい。
意外とその、「こんなのあたりまえだからタダで教えてあげるよ〜」の中に、強み、個性、長所、特技……いろんなキラキラした貴重なものが詰まっている気がします。
山登りLoveという知人に、時間をかけて、ありがたいアドバイスをたくさんもらって選んだトレッキングシューズ。新しい楽しみにつながってくれたらいいなと思っています。
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