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2015-08-13

時間と手間がワインを作る。(栃木県足利市 ココ・ファーム・ワイナリー)

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ココ・ファーム・ワイナリーのカフェ テラス席にて 2015.8.9 栃木県足利市

ココ・ファーム・ワイナリーのカフェ テラス席にて 2015.8.9 栃木県足利市

先日訪れた栃木県・足利市で、ワインに詳しい知人に、ココ・ファーム・ワイナリーというワイン醸造場に連れていってもらいました。

緑の景色を眺めてリフレッシュ。知識が得られて、飲んで、食べて、友と語らって、素敵なお土産も買える場所で、オトナの日帰り遠足にはぴったりの楽しいところでした。

ちょっと長めですが、レポートします。

 

ブドウ畑はかわいらしい

お酒が好きだけどワインにはそんなに詳しくない私。一番テンションが上がったのが、ブドウ畑でした。

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収穫する果実には紙でカバーがかけられ、大切に育てられています。

 

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ブドウは巻きつるでぐんぐん伸びていくつる植物です。育てたことのあるゴーヤに、つるの仕組みが似ています。つるを這わせるブドウ棚は、頭よりも少し高い位置にピンと貼られたワイヤーでできています。

 

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急斜面一面に作られたブドウ畑。斜面の作業は大変だそうです。
斜めに見えますが、水準をとって水平で撮影してこれです!
手前にバラが植えられています。病虫害がブドウより先に出やすいバラは、さながら炭鉱のカナリアのように、ブドウ畑の管理に役立っているということです。

 

知的障碍者の働き場として

このワイナリーが特徴的なのは、「知的障碍者の働く場所を作りたい」という思いから生まれた場所というところです。

1950年代に、当時「知恵遅れ」と言われていた中学生たちと担任教師が、日当たりのいい山の斜面を開墾して作ったブドウ畑が、このワイナリーの元になりました。1969年に、障碍者のための支援施設「こころみ学園」がスタート。(詳しくはこちらに。 http://cocowine.com/vineyard_winery/kokoromi/

知的障碍者の職場として、ブドウを使ってワインを作ろうと思いたってから、関係者は海外まで行って、ワイン作りについていろいろ調べたそうです。1980年には酒類製造免許を得て、営業スタートするまでにこぎつけました。

こうしてできたワイナリーから生まれるワインの品質は優秀だったとか。2000年に沖縄で開かれた九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)で、ソムリエの田崎真也さんの紹介により、国産のスパークリングワインが初めて海外のお客様を迎える晩餐会に使用された。それがこのワイナリーのワインだったというのです。(こちら http://cocowine.com/vineyard_winery/winemake/novo-process/okinawa/ に詳しい経緯が紹介されています。大変ドラマチックな話です!)

ブドウ畑に歴史とドラマあり! 予備知識なくやってきてこれらの話を聞いた私は、ただただびっくりでした。

 

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果実を絞ってためておく巨大なタンク。ここで上記の話を聞きました。

 

150809winery04ワインの貯蔵庫、ワインカーブ。空気がひんやりとしています。ここで樽に詰めて寝かされて、おいしいワインが誕生するのだそうです。

 

150809winery05樽からびんにワインを移し、また時間をかけて寝かせます。
そうすると、重力に従ってこのように、澱が下の方に静かにたまってきます。このにごった部分を取り除くと、私たちがいつも飲んでいるクリアなおいしいワインになるのだとか。

この時間をかけて澱を沈殿させる作業にも、知的障碍者が従事しています。きちんと指示どおり、正確に時間を計って少しずつびんを回して寝かせてまた回す、という作業をやりとげているそうです。

 

山の上の勤勉な見張り番

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施設を一通り見学したあと、ブドウ畑の上まで登ってみました。
斜面一面に、ブドウ畑が広がっているのが見渡せます。

その位置に、ブドウ畑の天敵のカラスを追う「鳥追い」役の男性がいました。畑を見張っていて、カラスが近づくと缶を強く打ち鳴らして追っ払います。じりじりと暑い日差しの中、実に真面目に仕事をしていました。知人が挨拶をしていましたが、会話はちょっと難しそうでした。

「カラスを追っ払う」というだけの仕事は、一見簡単かもしれません。でも体力と真面目さが必要で、人がやりたがらない、そして大事な農作業です。除草剤も化学肥料も使われていない、人間にとっておいしい農作物は、獣、鳥、虫にとっても大好物。人間様が食べるためには、戦わねばなりません!

その作業が、障碍を持つ人がお金を手にできる仕事として成立している仕組みに感心しました。

 

いざ! カフェと試飲コーナーでワイン

ワイナリーを見学したあとは、お待ちかねの食事です。

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ブドウ畑を見渡せるテラス席が気持ちよかったです。季節的に暑くはあったけれど!

ワインは、こちらで生産しているワインから選び放題。
先ほどの話を聞いては飲まずにいられない、歴史的スパークリングワイン「NOVO」の辛口は、お店でもこれがこの日最後とのこと。貴重な1杯をいただきました!

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骨つきソーセージつきのデッキランチ、1,200円なり。ワインとよく合って、美味しかったです。

ランチのあとは、ワインの試飲コーナーへ。
500円でこのワイナリーのワイン5種を、おつまみつきで味わえます。赤、白、辛口甘口など、自分の好みを告げると「これはいかがでしょう?」というワインをお勧めしてくれます。

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いやー、昼間っからお酒を飲めるって幸せな気分ですね!
おつまみがまた美味しかったです。チーズにくるみ、干しイチジク、枝つきレーズン、ミントと、野趣たっぷり。
ちょっと飲み過ぎました(笑)。

 

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試飲して納得したら、お土産にワインを購入いたしましょう。
ちょっと詩的な和名のワインは、共通したセンスがあって心惹かれます。
私は赤ワイン好きの母のために、味わいが軽くて飲みやすかった「農民ロッソ」を購入しました。

 

たっぷりのんびりおいしく楽しみました

いつも飲んでいるワインがどうやって作られているのかの一端を知り、とてもありがたく、貴重に思えました。そして、美味しい体験でした!

障碍者が働いているというと慈善事業のように聞こえるかもしれません。けれど話を聞くと、ワイン作りはワイン作りで、障碍者支援は障碍者支援で、きっちり分けてそれぞれがんばって、しっかり結果を出している。考え方がしっかりしていて優秀な事業──という印象を受けました。

そしてそこに一般客が行って見学して、楽しいところになっているというバランス感覚。牧歌的な癒し、来訪者へのもてなしと商売が成立している、心地いい場所でした。

秋の収穫のころの景色を、また見てみたいものです。

 


Spot Data

ココ・ファーム・ワイナリー

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公式サイト http://cocowine.com
場所 栃木県足利市
アクセス
東武伊勢崎線足利市駅、またはJR両毛線足利駅からタクシーまたはバス(ココファーム入口)
備考
ワイナリー見学も随時実施(500円)。ワインが飲めるカフェ(11時〜17時30分)、ワインのテイスティングができるワインショップ(10〜18時)が併設されている。
定休日 11月の収穫祭前日、年末・年始(12月31日〜翌年1月2日まで)、1月第3月曜日から5日間

 


Information

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このブログを書いている人
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宮野真有(みやの・まゆ)

東京都練馬区在住。フリーランスのフォトライター。

「楽しんで」「長く続けられる」「自分らしさが発揮できる」文章を大切に、教える・聞く・書くなどの文章関連のサービスを個人向けに行っています。

またブログでは、「植物」×「写真」×「文章」の3つをキーワードに、ベランダガーデニングや公園散歩の楽しみを発信しています。

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