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2015-08-09

25年前の小説『ジュラシック・パーク』は、いま読んでもとてもおもしろい。

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映画『ジュラシック・ワールド』を見にいく前にと、マイクル・クライトンの小説『ジュラシック・パーク』を、20数年ぶりに読み返しました。しかし意外に中身が古びていなくておもしろくて、ちょっとびっくり。科学を過信し恐れを知らない人間の愚かさは、今も変わっていないように思います。

 

『ジュラシック・パーク』で恐竜たちに恋をした

クレーンの群れにブラキオサウルスを重ねる 2015.03.17 東京都

クレーンの群れにブラキオサウルスを重ねる 2015.03.17 東京都

1993年に公開された映画『ジュラシック・パーク』は、マイ恐竜ブームの元年でした。
映画を見たあと、私の頭は恐竜に恋したような状態になってしまって、街でクレーンを見ては「ブラキオサウルスの首はあれぐらいの高さだろうか」、走る自動車を見ては「ティラノサウルスの走る速度はあれくらいだろうか」と想像しては楽しんだものです。

「14年ぶりに公開されたシリーズ最新作映画を見にいく前に、映画旧3作を見返したいな」と考えているうちに、原作小説を読むことになりました。

 

 

 

「恐竜は敏捷に行動する温血動物である」「ラプトルが集団で狩りをする」「巣を作り、子育てをする」「鳥に近い生態で、渡りをする」といった、当時最先端の恐竜理論を盛り込んだこの小説。さすがに今読むと、古く感じるのではと思いながら読みました。

ところが存外、おもしろい。なぜか?

それは、自然に対する人間の無知、傲慢といった問題点は、25年、四半世紀が経つというのに、一向に改善されていないからです。それが普遍的なおもしろさを感じさせるのです。

 

自然は制御できない。絶対に

ジュラシック・パークを完璧に制御できていると考えるインジェン社およびハモンド財団創立者、ジョン・ハモンドに対し、カオス理論を駆使する数学者イアン・マルカムが発する警句は、2015年現在の我々へのメッセージと考えてもそのまま通用します。

「われわれが〝自然〟と呼んでいるものは、われわれが認めるよりはるかに大きく繊細微妙で複雑な系(システム)の一部でしかない。われわれは自然の単純化されたイメージを造りあげ、そのたびにそれに裏切られる。わたしは環境保護論者ではないがね、人はまず、自分に理解できないものがあるということを理解する必要がある。何度同じことをくりかえしたら気がすむんだろう。何度証拠をつきつけられたら理解するんだろう」

この小説が発表された25年前はもちろん、毎年どこかで大災害が起きている今の日本でこそ、この言葉は実感として理解できる気がします。

小説のハモンドは、映画での童心を持つ好々爺と違い、野心のために恐竜復活を推し進めるビジネスマンとして描かれています。マルカムは自然への畏怖を持たないハモンドに、「ジュラシック・パークは必ず失敗する」と警告を発し続けます。また、地球や自然がいかに大きく、人間が自分たちが思っているよりどんなに無力な存在であるかを語ります。

「要するに、こういうことだ。危機に瀕しているのは地球じゃない。人類のほうだ。人類にはこの惑星を滅ぼすだけの力はない。救う力もない。しかし――自分たちを救済する力くらいはあるかもしれない……」

 

生物は必ず道を見つけだす

20数年前から印象的だった、私の一番好きなマルカムのセリフは、「生物は必ず道を見つけだす」です。たゆまず進化してきた生命が持つ本質的な力強さを語った言葉として、強く心に残りました。

「進化の歴史とは、生物が障壁の外へ出ようとする行為のくりかえしにほかならない。生物は必ずその障壁を打ち破る。そして、新しいテリトリーへ進出していく。それはつらい過程だろう。危険すらともなう過程だろう。だが、生物は必ず道を見つけだす」

マルカムの言葉の通り、決して自然界では繁殖しないよう遺伝子操作された恐竜たちは、その制約を超えて生きる術を見つけだしました。そしてイスラ・ヌブラル島のジュラシック・パークが壊滅したあとも、どこかで生きのびていることを思わせるラストになっています。

 

14年ぶりの新作映画が楽しみ

小説の中で時代を感じたのは、ジュラシック・パークの資金源がジャパン・マネーだったこと! そして、電源を回復しようとして奮闘する少年ティムが操作するパソコンが、「タッチ・スクリーン」なる、「触れて操作する最新式のモニタ」だったこと。昔読んだときには、言ってることの意味がわかりませんでした。まさか1人1台以上持つようになるとはね。そうそう、ジュラシック・パークの発電所に使われている発電機はHonda製でした。

予告を見た限りでは、映画最新作でもやはり恐れを知らぬ人間の技が、新たなパニックを呼ぶようです。果たして、めざましく進化したCGは、どんなめくるめく恐竜の世界を見せてくれるのでしょうか? とても楽しみです。

※文中の引用はいずれも、『ジュラシック・パーク(上・下)』マイクル・クライトン 酒井昭伸訳 早川書房 より。

 


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このブログを書いている人
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宮野真有(みやの・まゆ)

東京都練馬区在住。フリーランスのフォトライター。

「楽しんで」「長く続けられる」「自分らしさが発揮できる」文章を大切に、教える・聞く・書くなどの文章関連のサービスを個人向けに行っています。

またブログでは、「植物」×「写真」×「文章」の3つをキーワードに、ベランダガーデニングや公園散歩の楽しみを発信しています。

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