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2015-01-20

アガサ・クリスティーの「オリエント急行の殺人」

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eyecatch_tv

2015年1月11日・12日に二夜連続で放送された、三谷幸喜のドラマ「オリエント急行殺人事件」を見て、原作小説を久々に読んでみたら、ドラマとの相乗効果で2倍楽しめました。これは、原作未読の方にもすでに読んでいる方にもオススメできます。

以下、トリックに関わる記載はできるだけなしで、若干ネタバレありの感想と、ドラマとの比較です。

 

「オリエント急行の殺人」は、知らぬ人とてない、アガサ・クリスティーの代表作です。おそらく、発表当時のトリックの奇抜さでは、この作品と「アクロイド殺し」「そして誰もいなくなった」がTOP3ではないでしょうか。

また「オリエント急行の殺人」は、アガサ・クリスティーが生んだ名探偵、エルキュール・ポアロが活躍する推理小説でもあります。ポアロは、卵型の頭と両端がハネ上がった口ひげが特徴的な小男で、ベルギー人。自信家でキザでおしゃれで几帳面で神経質。「灰色の脳細胞」を持つと自称し、容疑者との対話から行う心理分析によって、事件の真実にせまるのが常です。

私がアガサ・クリスティーにハマってこの小説を最初に読んだのは、高校生のころ。フランス人だのイタリア人だのロシア貴族などが出てきても、イメージがわきにくくて、作者の描いた世界の半分も読み取れていなかった気がします。

ドラマは、思った以上に原作に忠実!

原作小説を読んでまず、三谷幸喜が思った以上に原作小説を忠実にドラマ化しているのに驚きました。舞台を日本に、さまざまな国籍の登場人物を全員日本人に置き換えていることを除けば、地の文もセリフも展開も、ほとんどがかなり忠実にドラマの中に拾われています。三谷幸喜の原作への愛、そうでなければこだわりを感じました。

ポアロがすべての推理を語りおえたあとの、ハバード夫人の描写とセリフは、ドラマの富司純子(羽鳥夫人役)の演技が思い浮かぶようで、読んでいてゾクッとしたほどです。

ドラマを見た人なら、ひとつひとつのシーンを、ドラマの劇中シーンを思い浮かべながら読むことができて、二重におもしろいでしょう。

原作では国際色豊かな登場人物が勢ぞろい

大きく違うのが、原作の容疑者たちは、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ロシア、ハンガリー、スウェーデン、ギリシャと、様々な国籍の人物であるところです。ドラマでは全員が日本人なので、国内の北や南の地方の出身者が、方言でしゃべる設定にしてあります。

「怒りっぽくてすぐ人を殺しかねないイタリア人」(イタリアンマフィアのイメージ?)が、ドラマでは「血の気の多い九州男の博多人」になっていたのは、おもしろかったですね。

登場人物の名前、原作とドラマの比較

読んでいて「そうだったのか!」と気づくのが、登場人物の名前です。

見ているときに気づいたのは、名探偵「エルキュール・ポアロ」が「勝呂武尊(すぐろ・たける)」になっていること。これには、「“ル”と“ロ”しか合ってないじゃん!」と突っ込んだものでした。

でも、エルキュールとはそもそも、ギリシア神話の怪力の英雄「ヘラクレス」のフランス語読み。一方、“武尊”と書いてたけると読むといえば、日本の怪力の英雄、日本武尊(ヤマトタケル)。音を似せることより、意味を拾ってこんな名前にしたのかなと思えます。

そのほか、

ヘクター・マックィーン → 幕内平太(まくうち・へいた)(二宮和也)
グレタ・オールソン → 呉田(くれた)その子(八木亜希子)
アンドレニ伯爵 → 安藤(あんどう)伯爵(玉木宏)

などなど、登場人物の名前をひとつひとつ見比べていくと、いろんなヒネリ方をしていて、楽しくなります。

殺人の計画から実行までを描いたドラマ第二夜は、さながら「忠臣蔵」のような雰囲気を見せていますが、

メアリ・デブナム → 馬場舞子(松嶋菜々子)

の馬場という姓は、おそらく、赤穂四十七士のひとり、堀部安兵衛が助太刀した「高田馬場の決闘」からとったのではないかなあと推測します。

原作を読んでみたくなった人は、今読むと楽しい!

アガサ・クリスティーを読んだことがないという人も、ドラマを見たあとでならかなりイメージがわきやすく、原作小説を読みやすいでしょう。ドラマのイメージを重ねながら読んでもさほど違和感がなく、むしろキャラクターがつかみやすいので、「ドラマを見てから読む」ことで楽しめると思います。

「かつて読んだことがある」人も、ドラマを見てから改めて読み返すと、新発見があって楽しいと思いますよ。

原作を読むともう一度ドラマを見てみたくなるのが、悩ましいところですが……。

 


Book Data

書名 「オリエント急行の殺人」
原題 Murder on the Orient Express
発表年 1934年(イギリス)
著者 アガサ・クリスティー(Agatha Christie)
訳 山本やよい
出版社 早川書房
備考 ハヤカワ文庫・クリスティー文庫
初版 2011年4月

 


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